新潟・秋田・青森編 第四回 平成九年七月七日〜十日
先月(福井県永平寺から富山・新潟)の旅が一番過酷な旅だった。 やはり、簡単にこんな旅が出来る訳がないのだからと自分自身に言い聞かせました。 今日は七夕、私の「夢」が叶うように短冊に「無事日本一周できますように!」と願いを託しました。 朝四時の列車に乗り、私は「なんて馬鹿なことをしているのかしら?おとなしく家のふとんでゆっくり寝ていればよいものを・・」なんて思いながら車中の人となる。 九時半にはもう「新潟空港」に着いた。 バイクの待機しているホテルまでタクシーで行く。 なにはさておきバイクのもとに走る。 屋根付きのバイク置き場においてあるため、すぐにエンジンはかかった。 一ケ月ぶりにここの奥様と会える喜びで恋人に会うような心境でした。 やはり今日の奥様の笑顔は心の底から慈悲にあふれていたのです。 心の美しい人は「笑顔」が美しいことを知らされた思いです。 私もこの奥様のような優しい表情の「笑顔」でありたいと願った。 ホテルの裏玄関に奉ってある「観音像」の前でしばらく手を合わせていると、不思議と体全体になにか熱いものを感じたのです。 声も聞こえたのです。 「安心して良いですよ。貴方を守っていますよ」・・ 前回の旅のような不安な気持ちが今回はなくなっていました。 快適に前に進みます。 道の駅「朝日」でトイレ休憩です。 この旅で「道の駅」の存在が私にとって重要なポイントになりました。 別府にもこのような「道の駅」があれば旅人にとって安心して出来るのになんて思いました。 いよいよ山形県温海町に入りました。 今日の宿は「鶴岡町」に決めました。 地図を見て、だいたいの距離勘が身に付いてきたのですから不思議です。 鶴岡駅前にバイクを置いて、駅前の派出所で「安く泊まれる所」を尋ねるととても親切にしてくださり、何件かの宿を教えてくださいました。 道路沿いに旅館があり、料金を尋ねると「三千五百円」で良いというので、この宿にきめました。 カンビールを飲み、ほか弁を食べ、心地好い疲労感に酔いしれました。 今日一日はとてもスムーズにここまで来れました。 雨音で目が覚めました。 不思議と不安な気持ちがしないのです。 先月の石川県のユースでの嫌な胸騒ぎの朝と今日の朝ではぜんぜん気分が違います。 外は小雨ですが、いつものようにバイクをぞうきんで拭きあげました。 母の写真を胸に抱き締め、「さー!一緒に行きましょう!」と声にだしてエンジンをかけました。 ゆっくり進めば良いのだからと気をひき締める。 真っ赤な雨かっぱに身を包み、秋田県立図書館を目指します。 この図書館巡り旅でこの秋田県立図書館にだけ今日「図書館」を訪問させていただくことを連絡しておきました。 館長さんがとても歓待してくださり、「時間がわかっていれば新聞記者を呼んでいたのに」と私の訪問をとても喜んでくださいました。 来年の全国図書館大会は「秋田県」であることや、昨年が別府で開催されたので、ここの職員さん達の多くも別府の会場に行ったことなど話が弾みました。 「貴方の行動は今までだれ一人として、していないことをしている。 日本一周している人・自費出版している人は全国にたくさんいるが、このようにバイクで全国の図書館に自分の本を届けに来た人は貴方がはじめて!」と絶賛していただけました。 そんな会話をしてくださる館長の表情に、ふっとあの観音様のお顔が重なりました。 館長さんが職員全員に私を紹介してくださり、拍手で激励されました。 今回の旅のもう一つの目的は「スナック岸」にお客様として来店され、年賀状のやり取りを何年もしていた「若美町」の方を尋ねることでした。 電話には奥様が出られ、“バイクで近くまで来ている旨”を伝え、いつも年賀状を出していることで、私の事はすぐに分かっていただきました。 この方は市議会議員さんで日頃とても忙しく、なかなか家にいる時間がない方なのですが、今日に限り一日家に居れたそうなのです。 これも私にとっては神様のお導きとなんでも都合良く解釈をする私。 若美町は「北緯40度」の位置にあるそうです。 夕陽温泉「WAOコテージ村」に連れて行ってもらい、人の出会いの不思議を改めて噛み締め、ここの温泉も私にとって忘れる事ができません。 突然の訪問なのに奥様手づくりの心のこもったお料理で歓待していただきました。 今日出会った図書館長さんとここの奥様が知り合いで、共通の会話が出来るなんてとても不思議な思いがいたしました。 新鮮な野菜は全部自宅の畑で採れたものだそうです。これがグリーンツーリズムで、贅沢とはこんなことをいうのではないかと改めて食文化について考えさせられました。 今日はここで泊めていただきました。 奥様は私よりも遅く寝たはずなのですが、朝早くから朝食の準備をしていました。 当たり前の生活がこのような家庭なんだ。 私は当たり前の家庭生活を捨ててしまったようなものだから、こんなことをしているのだ。とふっと自分のしている行動に疑問?自問自答してしまいました。 大家族の賑やかな朝食が済み、いよいよ私は青森県へといざ出発です。 今日もまた外は雨です。 幸いにしてたいした雨にならず、道路は広く車は少なく、快適に前に進みます。 昼食のために入ったドライブインにたくさんの自衛隊の隊員さんがいました。 せっかく隣同志になったのだから、と別府のマップと私の自己PRをしました。 しばらく走っていると自衛隊のトラックが私を追い越し、隊員さんが車中から大きく手を降ってくださいました。 自衛隊のトラックを見るたびにこの日のことを思い出してしまいます。 またトイレ休憩のために「たかのす道の駅」に入りました。どこの道の駅もとてもきれいで、気持ちがよく、別府の公園や駅のトイレは汚い所が多いので、見習わなければいけないと思いました。 青森県立図書館にも特別苦労することなく到着しました。 女性課長さんが私の要望を心よく聞き入れてくださいましたが、一番肝心なバイクを預かって欲しいというと、「聞かなかったことにしておきましょう!」ということで、図書館の駐輪場に置きました。 「しばらく我慢していてね。」とバイクに声をかけ青森駅に行きました。 切符売り場の人に「今から一番早く別府まで行くための切符をください!」と私がいうと「エッー!!別府??」とびっくりしたような表情でした。 青森駅のホームから今まで見たことのないような夕陽に輝いた空を見たのです。 いわし雲が真っ赤に染まっていたのです。 19時43分青森発「日本海四号」寝台列車。 私がバイクで走った道を今は寝台列車に揺られながら、逆行しているのです。 新大阪翌日9時50分 新大阪から新幹線10時06分発小倉到着13時04分着 小倉13時22分別府14時50分着 本州縦断の列車旅は快適な旅でした。